シリーズこの地方の言葉⑩

〜寂しいときは、ため息混じりで「せがないなぁ〜」〜

仲間との旅行に急に友人が行けなくなった事を知り
「なんじょ、せがないなぁ〜」
牛しゃぶだと思った宴会料理が豚しゃぶだったとき
「豚こぅ! せがないのぉ〜」
友人に頼み事をしに行って断られたとき
「そんな せがないこと言うなやぃ」
麒麟がもし高城山に来なかったら
「なんじょ。せっかく楽しみにしとったのに。せがないのぉ」等々

寂しさや虚しさを表現する「せがない」は、きっと語源は「精がない」なんでしょうが、微妙ニュアンスの違いで使い分けています。
「なんじょ。おまえが来やへんさかいに せがないやれぃ!」
「すまんのぉ しゃあないやれぃ! 法事が入ってもうたんじぇ」
「しゃあないけど、せがないのぉ〜」


またこの「せ」に小さい「ぇ」が加わると 
「みんな せぇだい 呑んでや〜!」(みなさん 遠慮無く いっぱい呑んでください)
「せぇだい 食べてや〜」(遠慮無くいっぱい食べてください)と使われています。
きっと「盛大して(せぇだいして)」が「せぇだいて」や「せぇだい」に簡略変化したのでしょう。
祝宴ではこう言いましょう!
「祝おうてのことやさかい せぇだい呑んで食べてや〜」
「なにぃ?? 呑めへんてかぁ? そんな せがないこと言わんと呑んでや〜」

方言には都で使われていた言葉が地方に伝わり、それが変化したり、あるいは都では使われなくなっても使われ続けている言葉が多いとされていて、この「精がない」「盛大して」もそんな言葉の一つなんでしょうね。それらも情報化社会では生活文化の金太郎飴化で消えていくことが昭和のおいちゃんには「せがない」ので使える限り使いたいと思っています。