〜「いっぺん かだがいてみぃ」「べっちょないけ」〜
賞味期限表示も消費期限表示も何もなかった時代、口に入れるものが大丈夫か大丈夫でないかは見た目と嗅覚に頼るしかなかったのですが、その当時はこの「かだがく」はあちこちで聞くことが出来ました。
京都を中心とした同心円上の地域に「かざかぐ」という同じ意味でその言葉が残っていますが、ご存知のように篠山では「ザ行」が「ダ行」に変換され且つ「かぐ」が「がく」にひっくり返って、特有の「かだがく」となります。
意味は「嗅ぐ」という行為を指し、きっと「風を嗅ぐ」から訛ったんじゃないかと想像できます。
ただ丹波篠山においては、これは「いい香り」には使わず、ちょっと危ない香り(笑)に使います。
三日前の「煮物」やカビの生える直前の「餅」なんかを代表とする明らかに今で言う賞味期限切れの食品の臭いや手について取れない妙な臭い等に対して使います。
「この里芋のたいたん、いっぺん かだがいてみぃ」と言われてその臭いに腐敗臭がなければ「べっちょない!」と答え、腐敗臭がするときは「あかん、ちょっといっきょる」と答えます。
「べっちょない」も播州を始め多くの地域で残っている言葉で「別状ない」が訛った言葉で多くは「大丈夫」という意味で使われます。
尋ねる際は播州地方のように語尾に「か」ではなく、必ず「け」をつけるのが丹波篠山でのアレンジなんでしょう。
「いっきょる」「いっとる」はずばり「だめだ」「腐ってる」という意味で使います。
「べっちょない」ときは、そのまま口にしても大丈夫だったんでしょうが、今はすっかり期限の日付表示にその行為は止められてしまいます。
しかし今でも期限表示のない弁当や料理を食べる機会も多くあります。「かだがく」嗅覚だけは退化させないほうがいいかもしれません。